立教スポーツ第157号
<6月3日更新>


水泳部・未知への勇泳・日本選手権B決勝4位・根岸

入学以来、数々の記録を残してきた本学水泳部の根岸(社2)。彼女が再び日本最高峰の舞台に立った。
4月21日〜24日に横浜国際プールで行われた第81回日本選手権水泳競技大会。世界選手権の選考会も兼ねた今大会で、根岸は女子五十b、百b、二百bバタフライに出場した。そして、そのすべてで見事予選通過B決勝進出を果たした。
昨年の「日本選手権10位」という快挙達成から一年。仲間とともに自身を高め、精神的にも成長した彼女が新たな力を見せつけた。
(写真=進化し続ける根岸。己のすべてをこの戦いに注ぎ込む)

限界との戦い
昨年のアテネオリンピックで世界に通用する実力を証明した日本競泳界。北島康介(コカ・コーラ)など世界屈指の選手が集まり日本一を争う日本選手権が今年もやってきた。
 水泳選手なら誰もが出場を夢見るこの大会。根岸の掲げる目標は二百bバタフライの自己記録を更新することだ。そして、この舞台で本学で唯一の出場者として最高の泳ぎをチームに見せることである。
大会に向け、根岸は2月から本格的に練習に打ち込み始める。3月に行われたグアム合宿では一日で12000b以上の距離を泳ぎ徹底的に体を鍛え抜いた。帰国後も調整は順調に進み満足のいく状態で日本選手権の戦いに挑む。
そして迎えた大会。三種目に出場の根岸は、まず初日、五十bバタフライに臨んだ。予選で自己記録を更新する泳ぎで見事にB決勝(9位〜16位決定戦)に進出。B決勝では4位と力を発揮した。
2日目の競技は二百bバタフライ。この種目に照準を合わせ練習してきた根岸は、B決勝4位という成績を残す。だが惜しくも目標にしていた自己記録を更新することはできなかった。
最終日、根岸は二百bの悔しさを晴らす泳ぎを見せる。百bバタフライ予選で自己記録を更新。B決勝では6位でゴールし、最後まで自分の力を出し切って大会を終えた。
大舞台での彼女の勇姿は部員の気持ちを高ぶらせるものになった。今できる最高の泳ぎを見せつけた根岸がチームに与えた影響は計り知れない。

仲間と共に
二種目の競技で自己記録を更新し、さらなる成長を見せた根岸。しかし、本学に入ってからの一年間は決して平たんな道のりではなかった。
昨年、入学早々に根岸は日本選手権10位という輝かしい成績でデビューを果たす。だが、その後は高校時代とは異なる慣れない環境での練習に苦悩する日々が続いた。満足のいく練習ができず、不満を口にすることもあったという。
その中で根岸の気持ちに変化をもたらしたもの、それは部員一人ひとりの存在であった。全員が己の限界に挑戦し、自分を越えていく姿を見て、彼女の気持ちは変わっていく。「今ある環境の中で精いっぱいやるしかない」。そう決意した根岸は、昨年の9月のインカレの百bバタフライで2年間待ち望んだ自己記録の更新を成し遂げた。
どんな環境でも自己新記録が出せると自信をつけた彼女には新たな水泳観が生まれていた。自分の記録は自分だけの記録ではないということである。今まで、「自分だけの戦い」として根岸は泳ぎ続けてきた。しかし、本学の一員として生活する中で周りから多くの刺激を受けていく。選手はもちろん、選手を支える女子マネジャー、そしてOB指導者たち。「自分の記録はみんなで作った記録。みんなが頑張っているから、自分も頑張れる」と根岸は語る。逆に主将・久保(経4)は、「根岸が一生懸命やっていると部が引き締まる。無言のプレッシャーを感じる」と語っており、お互いを磨き合えるチームだということがうかがえる。
この一年、チームの中で確かなきずなを築き、水泳への思いが変化した根岸。今後も新たな気持ちを胸に抱き、前に向かって突き進むだろう。

六大戦・立大初の根岸優秀選手賞女子部心一つに

日本選手権から5日後の4月29日。第13回東京六大学水泳春季対抗戦が川口市立東スポーツセンターにて行われた。厳しい日程の中で行われたこの大会で、またも根岸が驚くべき成績を残した。
 根岸は女子五十b、百b、二百bバタフライの三種目に出場。まず、二百bバタフライで偉業を成し遂げる。シドニーオリンピック出場経験を持つ三田真希(早大)が3年前に作った大会記録を更新し、堂々の優勝を果たした。続く五十b、百bバタフライでは、短水路での自己記録を更新する。百bでは優勝し、五十bでも2位入賞を決めた。活躍を見せた根岸は高い評価を受け、立大水泳部史上初となる優秀選手賞を獲得。またも本学の歴史に新たな栄光を刻み込んだ。
 そして根岸の活躍に触発された女子部が二百bリレーで次につながる結果を残す。インカレ出場が可能となる標準記録まで0秒01まで迫る記録を出し、着実に力をつけていることを証明した。
 女子部は精神的な主柱石川(観4)をはじめ、植木(経3)、根岸、福場(コ2)。さらに、新戦力として期待される冷清水(観1)、山本(経1)が加わり、盛り上がりを見せている。女子部は目標に「関カレ2部4位」を掲げた。この目標を達成できれば、インカレ出場の標準記録が下がり多くの選手がインカレを経験できるためだ。根岸は「こんなに団結した女子部は今までに見たことがない。夢が実現しそう」と語り、自信をのぞかせている。
 そして、女子部のレベルアップは「関東1部4位死守」を目指し、日々練習に励む男子部にも影響を与えている。 
 男子部、女子部が共に競い、さらなる発展を遂げた時――。彼らの目標は現実味を帯びてくるに違いない。

(田井中)



女子バレーボール部・不屈の魂が結ぶ熱き輪

 高く、はるかなる飛躍は止まらない。彼女たちはついに本学の歴代最高に並ぶ3部へと上り詰めた。
 2年前から始まった4部までの連続昇格。そして今季、4月17日〜5月3日に行われた春季関東学生女子バレーボール4部リーグ戦が文教大体育館にて幕を開けた。今年、高い実力を持つ新人・小泉(コ1)をくわえチームの要として図師(ずし=コ2)が新たに主将を務める。若き司令塔を中心に成長した本学は4部の壁を破ろうと立ち向かった。
 3部昇格の栄光――。彼女たちはその高みを見据え、熱き戦いに正面から臨んだ。

激動の初戦
 彼女たちが歩む3部昇格への道。初戦、4部の強豪千葉大が本学の前に立ちはだかる。第1セット、立ち上がりは本学のペースで試合は動くも、盛り返され22―25で奪われる。第2セットは再び本学が主導権を握り25―18で押し切った。
そして譲れない最終セット。互いが闘志を燃やし、常に3点以上差がつかない白熱した戦いを見せる。中盤以降、相手優勢でコートが入れ替わるが本学の動きはますますさえ、コート内の雰囲気は緊迫する。感覚も研ぎ澄まされ相手コートの死角に打球を突き込む好機を逃さない。双方の競り合いが互角の激闘を見せ勝負の行方はとうとうジュースにもつれ込んだ。
1点の重さからチームは攻守にたける主力・秦(社2)にボールを集める。176aの長身から繰り出されるスパイクが決まり本学が1点をリード。次も秦が強打を放つ。千葉大は3枚ブロックで封じようとするが、高打点の一撃はそのさらに上を抜けた。しかしレシーブされ、同点に戻されてしまう。それでも本学は攻めの姿勢を崩さず、再び秦のスパイクが敵コートに突き刺さる。1点ごとに選手たちはかけ声を交わし、気勢は頂点に達していた。そして次の瞬間、相手が勝負を懸けた強烈なスパイクを打つ。その軌跡の先がラインを越えた時、彼女たちは歓喜に満ちた。27―25の末に初戦のヤマ場を乗り切ったのである。
続く試合でも本学を止める相手はいなかった。茨城大、神大、文教大、桜美林大が本学の前に退いていった。試合を重ねるたびに選手たちの気はより引き締まる。最終日の中大戦、彼女たちは来る3部昇格を懸けた強敵との決戦に心を奮い立たせていた。
(写真=勝利を願うチームの想いを受ける秦。ボールに意志を込める)

三部へと繋ぐ力

 練習試合では中大に苦汁をなめた本学。負けられない思いを胸に、彼女たちは中大戦のコートに立つ。
 しかし第1セット開始後相手のスパイクが次々と打ち込まれる。本学はレシーブするもはじかれ、攻撃の体勢を整えることができない。得点差は開き、序盤で1−7と大きく離された。本学はすかさずタイムを取る。力み過ぎで動きが硬いと反省する一方、図師は思うように打てないエースの山崎(コ2)に「思い切りやろう」と活気づけた。ここから本学が反撃の局面を迎えることになる。
 まずスパイクをブロックで防ぎ、守りを固める。さらにこの日、井上(コ4)の動きが
光っていた。調子を上げ始めた本学は巻き返し、25ポイントを超える大接戦となった。両校ともこのセットが勝負の分かれ目になると確信し必死のプレーを見せる。井上、秦のスパイクに、図師のネット際を走る弾丸サーブがさく裂。本学は強気な姿勢で攻め続ける。そして熱戦を制すまであと一点、山崎が幾度も執念を注ぎ込んだスパイクで敵の守りをねじ伏せた。第一セットを死闘の果てに30−28で奪取。第2セットは本学が快勝し堂々の栄冠を手中につかみ取った。後の明星大戦を勝利。4部全勝優勝、3部へ昇格を果たした。
 「3部昇格が目標だった」と図師と山崎は一年前の誓いを振り返る。チームが一丸となることで導いた今回の3部昇格。「3部も全員バレーで頑張りたい」と図師は意気込む。来季、彼女たちは部の歴史を塗り替える戦いに挑む。 

(黒田)


航空部・大翼広がる全国4位
 
 妻沼の空に、一つの大きな花が咲いた。3月5日〜13日に妻沼滑空場において行われた第45回全日本学生グライダー競技選手権大会。本学は全国の舞台で団体4位、個人においても岡山(社4)が5位入賞という偉業を成し遂げた。
 今大会は強風や雨などで天候に恵まれなかったため、少ないチャンスをものにすることが高得点獲得への糸口となった。悪条件を切り抜けて着実に得点を重ねた本学は、目標であった入賞を果たしたのである。
 岡山、樋口(社4)、そして中里(社4)の三選手が本学航空部で過ごした四年間の集大成。現役最後の大会で、彼らの今まで積み重ねてきた努力と勝利への強い執念が、最高の形で結び付いた。
(写真=風を味方につけて大空を飛行する本学の機体。好成績を呼び込んだ)

高みを目指し
全日本大会の予選にあたる関東大会は昨年12月に行われた。そこで本学は得点を挙げることができなかったが、獲得高度によって全国への出場を決めた。
 決して強豪とはいえない本学に全国4位にのし上がるきっかけが生まれたのは大会3日目である。競技初日のこの日、本学の選手たちにとって初となる全国大会だったため、緊張で浮足立ってしまう。さらに、上昇気流が一番強かった時間帯に発航できなかったという不運もあり、得点することができなかった。
 「粘りが足りずに降りてしまった」と言う樋口。その反省が翌日以降に生かされることとなる。競技2日目はなかなか得点者が現れない、厳しい飛行条件となった。そんな中、岡山は集中力を保ち少ないチャンスを逃すことなく、貴重な得点を記録する。
 競技3日目は大会を通じて一番良好な天候となり、一番手で飛んだ岡山は理想的な形で得点する。三番手の樋口も「何としてでも得点を」という強い気持ちで周回し、得点を追加した。
 そして雨などによる3日間の中断を挟んで迎えた大会最終日。強風という悪条件に「パイロットの腕次第で不利を克服できる面白い日」と、岡山は果敢な姿勢で立ち向かった。そしてさまざまなプレッシャーをはねのけた彼らはついに全国4位の座をつかみ取った。

飛躍の裏側に

今回、大躍進といえる活躍を見せた本学。残した成績は、強豪校にあと一歩と迫るものであった。
 本学航空部の置かれた環境は、他の強豪校に比べると決して満足とはいえないものだ。練習量や選手層などの差もあるが、「車に例えるならスポーツカーと乗用車」という機械性能の差が特に大きな問題である。
 そのような差を、岡山、樋口、中里の三人は限りなく小さなものにした。これは練習時から高い意識を持って競技に臨んできたことの結果である。岡山の「その時その瞬間のフライトに全力を尽くした」という言葉には、彼の力強い姿勢が顕著に表れている。
 また、選手たちは切磋琢磨(せっさたくま)することも忘れなかった。練習や試合の後、徹底的に話し合うことで反省点を見つけていった。強豪校に比べ練習量が大きく劣るため「一回の練習で最大の効果を出せるようにする」ことが必要不可欠だったのだ。そのため、部員同士が激しく叱咤(しった)し合うことも少なくなかった。
 今回の大会で岡山たちは引退となり、新主将の大澤(法3)を中心としたチームとなる。岡山と樋口は口をそろえて「上を狙えるチームなのだから、勝利に対してもっと執着してほしい」と語る。それと同時に「空を飛ぶ楽しみをかみしめてほしい」とも述べた。
 本学航空部は、強さだけでなく、楽しみや喜びも求めている。環境に恵まれている他の強豪校とはまた違った形で、念願であった上位進出を果たすことができた。全国4位入賞――。彼らが歩んできた道に誤りはなかった。

(上野)










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