2010年度現代企業法(租税法部分)(EX282)


期末試験(2011年1月26日4限実施) 租税法部分 担当:浅妻章如
次の(ア)〜(オ)に当てはまる数字を、下の枠内に記入しなさい。解答の決まりごとを守らない答案(例えばペンまたはボールペン以外で解答する答案、氏名等を書いていない答案)は零点とする。

1.K国(法人税率40%)の法人L社は、国内で税引前所得500を稼ぎ、M国(法人税率35%)で税引前所得400を稼いだ。L社がK国に納めるべき法人税額(外国税額控除適用後の額)は (ア) である。

2.B社が有する甲土地をC社が入手したいと思い、CはBに提供するための代替地として乙土地を独立の第三者たるD社から900で購入して用意した。Bは、乙土地だけでは足りないとし、更に金銭200を要求した。結局、BとCとの間で、「Bは甲土地を800でCに売却する。Cは乙土地をBに600で売却する。差金決済としてCはBに200を支払う」という内容の契約を締結した。しかし課税当局は、BとCとの間で甲土地と乙土地との交換(但し200の補足金付)がなされた、と主張した。B側が主張する契約が裁判で認められた場合のBの得る土地譲渡益をe、課税当局が主張する契約が裁判で認められた場合のBの得る土地譲渡益をfとすると、e−f= (イ) である。

3.G国(法人税率20%)の法人H社は、H社の関連会社であってI国(法人税率 (ウ) %)の法人であるJ社に対し、J社から受けたノウハウの対価として500を支払った。この取引に関し、I国課税当局は、「H社のJ社に対する支払額を不当に小さくすることで、H社とJ社の合計の法人税額を40減らそうという企みがある。H社がJ社に本来支払うべきノウハウの対価としての独立当事者間価格は700である。」と主張した。なお、H社・J社ともに他に充分な収益があるとし、タックスヘイヴン対策税制はないものとする。

4.A国(法人税率30%)の過小資本税制では資本:負債比率で1: (エ) までの負債に係る利子支払しか損金算入を認めていないとする。A国法人S社がその単独親会社である外国法人P社から1000の出資と10000の貸付を受けていた。貸付の約定利子率が年5%であったのでS社がP社に500の利子を支払ったところ、そのうち300の損金算入は過少資本税制により認められなかった。支払利子全額損金算入が認められる場合と比べ、この過小資本税制によりS社の法人税額は (オ) 増える。なお、S社には他に充分な収益があるとする。

【解説】
1.講義配布資料スライド29。(ア)=(500+400)×40%−400×35%=360−140=220。
2.スライド16。B社における甲土地の取得価額をbとすると、(イ)=e−f=(800−b)−(900+200−b)=−300。
3.スライド25。I国主張通り価格が700であるとすると、J社の所得は200増える。200×((ウ)%−20%)=40より(ウ)=40(%)。
4.スライド12、スライド4。200までしか損金算入が認められない→1000×(エ)×5%=200より(エ)=4。(オ)=300×30%=90。


【講評】
ア〜オまで各5点です。エとオは独立しています。
前から簡単と思える順序に並べたつもりでしたが、アとオは概ね出来ていました。逆にイは容易だと思ったのですが正答率があまり高くありませんでした。エとオは難しいかもしれないと思って最後にしたのですが、意外と良くできていました。ウの出来具合は概ね予想通りでした。
よくあった間違いとして、
(ア)240(恐らく900×40%−400×30%などと税率を間違えたのでしょう。落ち着いてください)
(イ)300(正負間違えるのは仕方ないですね。f−e=(イ)としておけばもう少し正答率が上がっていたかもしれません)
(ウ)20(恐らく(700−500)×ウ%=40だと思ったのでしょう)
(ウ)28(500×(ウ%−20%)=40という斬新な式を立てたのでしょうか?)
(エ)0.4(恐らく10000×エ×5%=200という式を立てたのでしょう)
(オ)60(恐らく200×30%=オと勘違いしたのでしょう)
(オ)1800(もう何が何だか???)。

平均点7.51 標準偏差6.15 思ったより低いです。特に政治学科の平均点が低いので、頑張りましょう。 25点満点の方が5人います。411人受験した中での選ばれし5人として自慢しましょう(とはいえ、誰が租税法部分について満点だったか知らせる術がありません。残念です)。
ペン又はボールペンで解答せよ、氏名・学籍番号等を記せ、といった指示に従っていない答案が今年もありました。残念です。


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