2022年度明治学院大学国際租税法




期末試験解説 2023年1月27日(金)1時限実施

 抜粋されてない条文も関係しうる。原則として日本の現行法令に依拠するが、震災復興増税・地方税法は無いものとし、地方消費税は無く、国税としての付加価値税の税率が10%であるとし、法人住民税や事業税は無く、国税としての法人税率は30%であるとし、年単位の計算とする(月日の考慮は不要)。本問の全ての法人の事業年度は暦年である。日本とX国との間でOECDモデル租税条約と同内容の租税条約(23条は23B条の外国税額控除方式)が締結されている。X国の租税法令及び通貨は日本と同様であり為替換算を考える必要はない。
 日本法人・咲良社(以下「S社」。消費税法上の課税事業者である)は焼きそばパン(以下「Y」)を製造し卸売りしている。S社はX国に販路を広げるべく、完全子会社としてX国法人・鞍部社(以下「K社」)を設立した。S社はYを製造しK社に税抜価格2000(税込価格は回答者が考えよ。以下同様)で卸売りし、K社がX国の消費者にYを税抜価格3000で販売している。S社はYを製造するために原料を日本法人・冬坂社(以下「F社」)から税抜価格1000で仕入れ、Yを製造する機械を日本法人・網口社(以下「A社」)から税抜価格5000で仕入れ、Yを製造するために従業員である日本居住者・比治山(以下「H」)を4000で雇っている。S社はK社に1000の出資をし、9000の金銭貸付をし、K社は毎年15%(すなわち1350)の利子を返済する義務(元本返済期限は本問より後であるとする)をS社との契約上負っている。
 (1)(20点)S社がA社に支払った機械購入代金とS社がHに支払った賃金に関し、S社の法人税法上の計算と消費税法上の計算との違いを説明せよ。
 (2)(20点)K社は1350の利子と200の配当をS社に支払った。下記(3)(4)の考慮をせず、この利子・配当の支払に係るX国の源泉徴収税額を、算出し、次に、S社の受領利子・配当に係る法人税法上の日本への申告税額を、算出せよ。
 (3)(20点)K社の15%の利子率が不当に高いとX国課税庁は主張し、独立企業間価格として適切な利子率は10%であると主張した。課税庁の主張は適当であるとする。K社(S社からのYの輸入・販売以外の事業もしているとする)の利子控除前の利益を2000とするとき、K社が申告した法人税法上の所得額と、移転価格税制適用後((4)の考慮の前)のK社の法人税法上の所得額を、算出せよ。
 (4)(10点)(3)の考慮に加え、過少資本税制が適用された後のK社の法人税法上の所得額を、算出せよ。
 (5)(20点)S社はYを直接K社に卸売りするのではなく、軽課税国であるZ国(日本とZ国との間でOECDモデル租税条約と同内容の租税条約が締結されている)に新たに完全子会社として鷹宮社(以下「T社」)を設立し、Yを、S社→T社→K社、という経路で売ることとした。T社はそれなりに在庫リスクを負担するという契約にしているので、S社→T社の売買価格やT社→K社の売買価格について移転価格税制による修正はできないものとする。日本はS社に対しT社の所得についてタックスヘイヴン対策税制を適用しようとした。S社は、フランスの判例に基づいて、日本の課税は租税条約違反であると主張し、日本は、租税条約違反ではないと主張した。S社の主張と日本の主張を説明せよ(日本の判例の説明は不要)。
 (6)(10点)仮に(5)に関し日本のタックスヘイヴン対策税制の適用が租税条約違反であり違法であるとした上で、日本は法人税法132条1項に基づき、S社に対し、S社→T社→K社、という経路の販売は、S社→K社、という経路の販売と比べて「不当に」S社の法人税額を減少させる行為であるから、S社→T社→K社、という法律構成を否認し、S社→K社、という法律構成を前提としてS社の課税所得を増額させる更正処分をした。この更正処分は適法か、論じよ。


【解説】(概ねEX412と同様なので無し)

【講評】受験者数が少ないので講評なし

 

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