1999年「エリカのために」
〜STORY〜
ひょんなことから、付き合うことになった聴覚障害者のエリカと、健聴者のタクヤ。 しかし、付き合っていくうちに、大きな壁が二人の間にあることに気づき始める。 ろうの世界と健聴の社会・・・。 エリカは、聴覚障害者の親友・コトミの反対にあいながらも、タクヤの愛を信じ続ける。 ある日、無料宿泊券を手に入れた三人は、都内のホテルに遊びに行くことに・・・。 深夜、寝静まったホテルの一室で、エリカはそっと自分の胸の内をつぶやく。 ろうでもない、健聴でもない私って・・・。揺れ動くエリカの心。 エリカ独白。 「私は今、自分の居場所を探している。 ろうだとか、盲だとか関係ない。すべての障害が個性として認められる世界。 タクヤに出会うまで、私は恋をするならろうの人じゃないとダメだって思い込んでいた。 聞こえないことがわからない人に、私の気持ちなんて伝わらないって思っていた。 でも、タクヤは違った。 殻に閉じこもるな、自分だけの世界に入るなって。 聞こえないことを意識しすぎているのは私のほうだって、教えてくれた。 タクヤと一緒にいると言葉はいらなくなる。 ただ、向かい合って、静かに見つめあっているだけでいい。 それだけで、心が満たされて、幸せな気分になれて・・・・」 しかし、その時、突然、ホテル火災が発生。 エリカを助けようと、必死にドアを叩き続けるタクヤ。 しかし、エリカにタクヤの声は届かない。 煙に包まれた部屋で、エリカは叫ぶ。 「助けて!助けて、タクヤ! 私はここにいる!ここにいるのよ!!」 |