ラグビー部

雄々しき濃紺の挑戦者たち
(前編)
苦闘の日々


 話は夏にさかのぼる。
 長野県小県郡真田町の菅平高原。合宿などで全国のラグビーチームが集うことで有名な地域である。ここで、2週間にわたる本学ラグビー部の合宿が行われていた。

 本学は昨年の関東大学対抗戦Bグループで全勝優勝、東大との入れ替え戦も制し、1997年の2グループ制導入後、初のAグループ昇格を果たしていた。
 8月23日、開幕を3週間後に控えた本学の仕上がりを見るべく、青い空も白い雲も近いこの高地へ訪れた。


 この日は東北学院大との練習試合が行われた。
 合宿8日目ということもあり、負傷でWTB堂内(観4)、SO西田(社2)ら主軸を欠いた本学は、持ち前の展開力が影を潜め、0−33で完封負けを喫した。

 DF面では速い展開に対しての対応の遅さ、オフェンス面ではタックルを受けた後に2次・3次攻撃へ持ち込めないことなどが目に付いた。だが、FB武藤(法2)、CTB関澤(経2)の速攻や精力的なフリーランニングに、前年からのチーム力の底上げが垣間見えた。
写真=FBの座を不動のものにした武藤(中央)

 今季、主将の重責を担う飛田(経3)は、チームの状況を「課題と挑戦の繰り返し」と表現する。
 Aグループで戦う相手は、どこも明らかに格上である。そのため、これまでよりもレベルの高いチームとの練習試合をこなし、そのたびに多くの課題に直面した。それを克服してはまた新たな課題に直面し、また挑戦を重ねていく…その反復こそが成長への過程となるのである。

 そういった挑戦者ゆえの厳しさを味わうとともに、その一方で開幕を心待ちにする選手も多い。
 「大勢のお客さんの前でプレーしたかった」と話す選手は、1人や2人ではない。加えて今季は、ラガーマンの憧れである秩父宮ラグビー場で3試合も戦えるのである。その希望も、選手に力を与えているのだろう。

 今季は強豪校との戦いのみならず、おそらく敗戦が続く中での逆境との戦いにもなるだろう。
 だが飛田は「今年は、どんなに厳しい状況でも下を向かないようなチームにする。自分がキャプテンになった意味はそこにある」と語る。
 たとえ道が険しくとも、希望を失わずに歩んでいく――。彼はチームの決意を代弁した。


 数多くのOBや来賓を招待し9月7日に開かれた創部80周年記念祝賀会を経て、戦いへの思いを強くした本学。いよいよAグループで最初のシーズンが幕を開けた。


 第1戦 対日体大(9月15日・アミノバイタルフィールド)
       ●21−111

誰もが、現実の厳しさを痛感した。

 「どこから抜かれるのかわからない」。
 試合後、ディフェンスの要である武藤は戸惑いを隠せずにつぶやいた。相手の圧倒的な攻撃力に、防御網は完全に切り裂かれた。

 待ちに待ったAグループ初戦。気合十分で臨んだ本学だったが、相手に主導権を握らせなかったのは開始から10分間だけだった。
 先制トライを許すと、正確な個人技を生かした相手の攻撃にほんろうされ、前半だけで50失点。後半に武藤が2トライ、西田が1トライを返したが、終わってみれば17トライを許す苦い開幕戦となった。
 日体大は昨年、8チーム中6位。自動残留できる最低限の順位に終わった相手にさえ予期せぬ大敗を喫したことは、選手たちに大きなショックを与えた。

 早急に克服すべき課題はディフェンスだ。2週間後に控える第2戦に備え、チームはタックルの強化を徹底的に行った。


 第2戦 対早大(9月28日・熊谷ラグビー場)
       ●7−97

 第3戦 対慶大(10月5日・秩父宮ラグビー場)
       ●5−85

 第4戦 対明大(10月12日・高崎市営浜川競技場)
       ●12−85

 日本でも有数の強豪校と毎週対戦したこの3連戦で、本学はAグループの厳しさを何度も思い知ることになる。どのチームもベストメンバーをそろえはしなかったが、それでもレベルの違いは明白だった。
 個人の実力差もさることながら、選手層の厚さも彼らと本学との決定的な違いである。多くの選手を温存してもなお強さを見せつける相手に対し、負傷者が続出する本学は主力と控え選手との力の差を露呈してしまった。

 過密日程も災いし、本学は満身創痍(そうい)の状態に陥ったが、それでもすべての試合でトライを決め意地を見せている。徐々にAグループでの試合に慣れ始めてきた選手たちは、より一層のレベルアップを目指し、続く対帝京大へ備えた。
写真=豊富な経験を活かしFW陣を率いたLO沼田(社4=中央)とHO大場(経4=右)


 第5戦 対帝京大(10月26日・秩父宮ラグビー場)
       ●5−112

 この日は、ベストメンバーのうち5人が欠場。本来はLOの沼田が掛川(コ3)の穴を埋めるべくNO.8を務めるなど、本学は苦しい布陣での戦いを余儀なくされた。
 対する帝京大は重量FWが自慢のベストメンバーをそろえた。彼らの破壊力は想像以上であり、FW戦では完敗だった。

 この試合もやはり大敗。だが、その中でも「立教らしいラグビー」の片鱗を見せた場面があった。

 後半15分、左サイドからSH大室(社4)→SO西田→WTB高橋(淳)(社3)と右に大きく展開しトライ。前方のスペースを消されても速い展開で相手を振り切る――。本学の持ち味である展開力を活かし固いディフェンスを崩したことは、選手たちに攻撃面での自信を植えつけた。
写真=臆することなく相手に挑む本学のスクラム



 次の試合は1カ月後。その頃にはほとんどの負傷者が復帰する見込みだ。
 筑波大戦、青学大戦と続くこの重要な連戦へむけ、本学は再調整期間に入った。
                                                       
(2003年12月11日・小見)

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