ラグビー部
〜ALL OUT(前編)春季オープン戦観戦記〜

 汗と涙と誇りをかけて――

 強豪たちが鎬(しのぎ)を削る関東大学ラグビー対抗戦Aグループの火蓋が切って落とされた。今年も例に漏れずし烈な戦いが繰り広げられるなか、本学はここまで三戦連敗。しかし力強く、確かに成長した濃紺のジャージがそこにいる。
Aグループ昇格後三年目、「勝負」の年に、彼らはどのような戦いを見せ、いかにして「濃紺」という存在感を示すのか。まず、本学の今年にはいってからの歩みをたどってみたい。

 春のオープン戦。初戦の相手は立正大。晴れ渡る空のもと、春のスタートとなる試合が行われた。先制点は立正大だった。開始6分、本学のモールから相手がターンオーバーし、トライ。その後も17分に追加点を許してしまう。しかし本学も26分にSO西田主将(社4)が、38分にはCTB小林(経2)が得点し、15−15で前半を終える。後半も一進一退の攻防が続き、結局27−29で試合を終えた。僅差で敗れはしたものの、随所に良いプレーが見え、今年度の活躍を予感させる初戦となった。

次の相手はライオン。通いなれた富士見グラウンドで、空を厚い雲が覆う中でのキックオフとなった。「今年から送るときの走るコースを変えた」というパスも速くつながり、前半を12−10で折り返す。後半開始早々にもCTB小林(経2)が追加点を加えるなど、47−29の勝利だった。試合後、西田は「前回の立正大戦で手ごたえを得たものが、今回は得点につながった」と語った。次への課題は「強い相手に当たり負けない」ことだ。「そこを煮詰めて秋には日体大と筑波大を手中に」と意気込んだ。

そしてリーグ戦一部の流通経済大との試合。午前中降った雨に湿る、柔らかな人工芝グラウンドで行われたこの試合で、本学は多くのことを学んだ。この日のテーマは「勝ちにこだわる」こと。しかし前半最初のトライのとられ方がよくなかった。西田は「FWがねばったが負けていた」と言う。また、「してはいけない」と分かってはいるものの自陣でのペナルティも多くなってしまった。しかしこの試合で良いところもたくさん見せた。まず、セットプレーの精度。ラインアウトからボールを奪う場面があった。そして、一年生についても、「伸びしろが充分ある」と言う西田。新戦力にも期待がかかる。また、この日西田は「練習は厳しいけど楽しい」と語った。一人ひとりが自ら考え、「やらされて」いない練習が、本学の強みを効果的に引き出しているようだ。

次にセブンスでの借りを返したい東北学院戦。ここで本学にとって大きな出来事がある。主将であり、チームの軸である西田が負傷したのだ。それでもなお試合に出場し続ける彼の情熱に応えるように、本学は24−22で一進一退の激戦を制した。しかしこの怪我により、本学はこの後の試合で主軸を欠くことになった。

そして、春シーズンの山場となるであろう日体大との対戦の日がやってきた。西田は怪我のため出場せず、SOには木暮(法2)がはいった。本学は前半開始早々本学のペナルティで相手にチャンスを与える。4分にはど真ん中のトライをきめられ、その後もおよそ5分ごとに得点を許してしまう。試合後に副将の高橋(社4)が語ったように「テンポに乗れず敵にのまれてそのままずるずる40分というかんじ」で、前半を終えてスコアは5−38。ハーフタイムに「最初の5分を大事にしよう、タックルも激しく、ディフェンスのときにも前に出る気持ちを大事にしよう」と気持ちを改め、後半に全てをぶつけた。後半開始5分、相手ボールのラインアウトから、HO奥富(法2)のタックルでボールを奪い右に展開。新人のPR三輪(観1)がポスト右側にトライをきめた。ここで盛り上がった本学は、9分にも相手のミスからWTB武藤(法4)が独走トライ。その後も一瞬相手のペースになることはあっても大きく乱すことなく、後半日体大の2トライ1ゴールに対し、本学は5トライ2ゴールの猛追を見せ、全体では34−50で試合を終えた。試合後、高橋は「相手が日体大ということで、もちろん勝つつもりだったが動けていなかった。勝ちたい意識が点差や勝敗に影響してくると思う。相手については、前に出て止めれば止まることがわかったので、100lの力を出せば秋には勝てる」と語った。

最後に春のシーズンを締めくくる関東学院戦。青く高く晴れ渡った空に、釜利谷(かまりや)の美しい芝をなびかす風が吹き抜ける。この日の試合にはシーズンの最後として3つのテーマを掲げていた。一つめに、ブレイクダウン。二つめに、DFのコミュニケーション。そして最後に、ターンオーバーからのアタックだ。試合は開始直後から両者一歩も譲らぬ熱戦を繰り広げた。未だ西田を欠く本学だが、「(西田)創に甘えないで勝てるチームに」と高橋も言うように、全員が気迫をみなぎらせる。対する関東学大も、一昨年の大学王者の意地がある。沈黙を先に破ったのは関東学大、開始8分、ライン際のモールを押し込んでトライ。しかし本学も開始10分、相手のミスからスキをついてFB武藤が独走トライをきめる。その後も取られては取り返す攻防が続き最後まで熱戦を繰り広げ、スコアは35−33。武藤がコンバージョンキックを全て決めた本学の勝利となった。試合後、「テーマについては大方できていた」と語った高橋。そして「西田のいない中、強い相手に勝てたことは大きな自信になった」と語った。

この春を振り返って成長したところは、まずブレイクダウンだ。タックルされても「何としても立っている」という意識が全員にある。さらにパスについては、まっすぐ走ることを意識し、スピードと鋭さに磨きがかかった。そして最後に、西田のぬけた試合を経験したことで、一人一人が自ら勝利を目指して進めるチームになった。
次なる課題はペナルティを減らすことと、FWのスクラム。2005年度の本学は、確実に一歩一歩を踏みしめて前に進んでいた。


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(2005年10月22日・麻田)







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