高エネルギー加速器を用いない、基礎物理実験
この研究室では、物理学の基礎的な問題に興味を持って、主に小規模実験による研究を推進しています。基礎的な問題とは、素粒子の相互作用の性質や時空構造、それからここでは行っていませんが、量子力学の原理的な問題などを指します。原子核物理学の範疇に入る、ベータ崩壊の精密観測による弱い相互作用の検証や、通常の素粒子・原子核物理には属しない、近距離重力の実験研究を行っています。 実験研究の場合は、実験技術の開発が成否を決する最重要事項ですので、常に目標とする物理の実験を遂行するための技術開発を進めています。
2007年研究室合宿@清里
余剰次元探索実験を紹介したブルーバックスを出版しました! 2011年2月発刊。
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主な研究の柱は
時間反転対称性の検証 |
本研究室の主眼テーマです。時空対称性の精密検証により、素粒子標準模型の検証、及び大統一理論等の予言する新現象の発見を目指しています。スピン偏極した原子核のベータ崩壊の精密相関を調べる実験です。主に大学院生が推進しています。カナダのバンクーバーにある、TRIUMF研究所に滞在して実験を行っています。卒研生は主に大学で基礎技術開発を行って腕を磨きます。 |
余剰次元の探索![]() |
10次元時空を要求する超弦理論等は近距離での重力の逆ニ乗則の破れを予言しています。我々はピコ精度デジタル画像処理型変位計を武器に、ミクロンスケールでの万有引力の法則の精密検証を行っています。大学院生と卒研生が協力して推進しています。無重量状態を利用した国際宇宙ステーションでの実験も目指しています。 |
高温高密度核物質![]() |
京都大学・理化学研究所との共同実験です。ビッグバン直後の熱い宇宙や中性子星内部等の高温・高密度極限状況におけるハドロン物質の性質を原子核衝突を用いて調べています。理研の加速器を用いてアイソスピン非対称な核物質について実験を行う予定です。成果を早期にあげたい大学院生募集中です。 |
高エネルギースピン物理 |
京都大学・理化学研究所・KEKとの共同実験です。重心系エネルギー500GeVでの高エネルギー偏極陽子陽子散乱でのWボゾン生成をシグナルに陽子の構造や対称性の基礎研究を行う巨大実験です。実験はニューヨークのBrookhaven国立研究所で行います。アメリカの巨大加速器で活躍したい「優秀な」大学院生募集中です。 |
ここでは、卒研生や大学院生の研究内容を紹介します。
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我々はこれまで、主に理化学研究所の大型加速器RIBFを利用した、大量で多様な不安定原する事で弱い相互作用の精密検証を行う事を目指して実験準備を行ってきました。2007年度には、高エネルギー加速器研究機構のTRIACを利用した、時間反転対称性の破れの探索実験をついに開始し、大成功をおさめる事が出来ました。これは非常に難しい実験で、偏極した8Li核から放出される電子線の、横方向の偏極をMott散乱を利用して検出しようというものです。素粒子の標準模型が正しければ、時間反転対称性はほぼ成立し、横偏極は観測されないはずです。よって、我々の実験により、素粒子の標準模型の精密検証、及び大統一理論等の予言する新現象の探索を行う事が可能です。2008年のノーベル物理学賞が与えられた小林・益川理論はごくわずかな時間反転対称性の破れを予言していますが、実は、小林・益川とは桁違いに大きな時間反転対称性の破れがなければ、宇宙に物質が多く存在し、反物質の存在量が極端に少ない理由が説明できないのです。その為、我々は2006年度にドリフトチェンバーという大型の電子線検出器を用いて、横方向偏極度を計測するシステムを、世界で初めて開発に成功させました。
下の図は、完成したドリフトチェンバーを用いてKEKにて行った実験の様子です。研究室総出で東海に滞在して実験を成功させました。
この研究は非常に難しく、大学院生が中心になって進めています。これまでに下図の様な結果が得られています。この実験は対称性を利用した非常に巧妙な測定方法を用いるもので、系統的な誤差のとても小さい、信頼性の高いデータが得られる世界で初めての実験です。
我々は、この結果の1000倍の精度を達成出来る次世代の実験をカナダ・バンクーバーのTRIUMF研究所にて2009年より開始しました。2009年度には大学院生がバンクーバーに何カ月も長期滞在して実験を進めています。
卒業研究では、これらの実験への応用という目標を念頭に、また、全く自由な発想で、実験装置の開発研究を行ってきました。2003年度はベータ崩壊で放出される反跳イオンの位置を検出する装置を手作りし、2004年度は時間反転対称性の破れ探索実験で最重要となる検出器である、ドリフトチェンバーの開発を行いました。2005年度には光学式の飛跡検出器の開発を行い、2006年度からは本格的に時間反転対称性の破れ探索実験をスタートした事を受けて、その基礎開発を行うと共に、それに特化した小型の電子線飛跡検出器の開発を手作りで行ってきました。これらの開発研究を通じて、放射線検出器の基礎はもちろん、エレクトロニクスやコンピュータの基本的な能力を獲得してもらう事を卒業研究の目的としています。
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素粒子反応の研究では電磁力、弱い力と強い力だけが考えられ、重力はその極端な弱さから、実験の対象として完全に無視されてきました。しかし、超弦理論などの理論では重力は非常に重要な役割を果たしており、標準模型をはるかに超え、実験検証が不可能と思われてきた超弦理論の検証実験を行うには重力の測定は避けて通れない、最重要課題となっています。この研究では、超弦理論などが要請する、我々の4次元時空を超える余剰次元の存在の探索を、重力を用いて行っています。 我々の宇宙は10次元もしくは11次元時空で出来ている、と超弦理論は要請しますが、我々の知らない、余剰次元は観測できない程小さくまるまっているものと長らく信じられてきました。しかし、理論的にも実験的にもこれはただの思い込みで、実はこの余剰次元がミリメートル近辺まで拡がっている可能性が最近になって指摘され、世界中が注目しました。余剰次元方向へは重力以外の力の媒介粒子は伝播出来ない為、これまでの実験で気づかなかっただけである可能性があります余剰次元の存在を直接確認出来る唯一の方法は、重力を使って調べる事です。幸い、調べるスケールはミリメートルと、素粒子のスケールに比べて圧倒的に大きいので、実験は一見易しそうに思えますが、重力があまりに弱いために、これまで精度のよい実験は行われた事がありません。
我々はデジタル画像処理をフル活用した、物体の変位を計測するシステムを発明し、これまでの装置に比べて桁違いに高精度である、ピコメートルの計測精度を持つ変位計の開発に成功しました(特許取得)。この強力な武器を用いて、小物体間の重力による変位を計測し、逆二乗則を検証する実験を学内で推進しています。
2003年度よりこの実験を卒業研究として進めてきました。2003年度は上図の様な装置を製作し、わずか1ナノメートル規模の振り子の変位を計測し、重力による変位の観測を行いましたが、重力以外の影響を除去しきれなかった為、2004年度の卒業研究は系統誤差の相殺を主眼として、捻れ秤による重力計測を行いました。2005年度はより近距離での検証実験を目指した、重力加速度の計測による新方式にチャレンジし始め、プロジェクト開始以来の目標であった、近距離での重力の検出についに成功しました。それだけではなく、余剰次元のモデルに基づいて誤差の解析も行い、余剰次元の大きさの上限をつける事にも成功しました。2006年度はさらに装置の大幅な改善により高精度で1cm程度のスケールでの逆ニ乗則の検証に大成功しました。2007年度からは、前人未到の領域に挑むため、全く新しい測定原理の基礎開発を進め、その経験の全て投入した大規模な装置を葉山の研究所に建設しました。現在はついに、人類未踏の領域であるミクロンスケールに挑戦しています。 この研究は当初卒業研究として行ってきましたが、内容が非常に高度化してきたので現在は主に大学院生の研究テーマとして推進しています。特に卒業研究では新しい方式のトライなどを行っており、2008年度は重力実験の性能を活かした宇宙暗黒物質・重力波の探索実験などを行っています。 |
卒業論文・修士論文リスト
| 2010修論 | 「TRIUMFにおける世界最高精度での時間反転対称性の破れの探索」大西潤一 「画像処理型変位計を用いたミリメートル以下での近距離重力実験」小川就也 |
2010卒論 |
「太平洋両岸重力望遠鏡システムの構築と観測」岸礼子 「MTV実験の為の時間情報を用いた電荷読み出し技術(pQTC)の開発」戸塚裕実 |
2009D論 |
「Study of tme reversal symmetry in polarized nuclear beta-decay using tracking detector」川村広和 |
| 2009修論 | 「Newton-III Null実験によるミクロンスケールでのニュートンの逆二乗則の検証」秋山岳伸 「RHIC-PHENIX実験における光学的位置補正システムを用いたMuon Tracking Chamberのアラインメントのずれの評価」池田友樹 「TRIUMFにおける偏極原子核を用いた時間反転対称性の破れ探索実験」聖代橋悦子 「オンライン画像処理型変位計を用いた近距離重力測定実験」二宮一史 |
| 2009卒論 | 「高精度画像処理型変位計を用いた重力望遠鏡の開発とそのゆらぎの研究」西尾悠法,渡邊健太郎 |
| 2008修論 | 「時間反転対称性の破れ探索実験の為のトリガー回路の開発」豊田健司 |
| 2008卒論 | 「時間反転・パリティ対称性の破れ探索実験の為の横偏極電子線源の開発」大西潤一,宮原直亮 |
2007修論 |
「近距離重力測定による等価原理の検証」筒井亮丞 |
| 2007卒論 | 「重イオン衝突実験のための検出器開発」大石光 |
| 2006修論 | 「時間反転対称性検証実験のための電子横方向偏極度計の開発」 川村広和 |
| 2006卒論 | 「近距離重力の直接観測による余剰次元探索実験」矢沢和正, 佐藤俊昭 |
| 2005卒論 | 「センチメートルスケールでの重力の検証」荒木庸典, 山岡真一, 櫻井慶人, 大森健宏 |
| 2004卒論 | 「ねじれ秤による近距離重力の検証」天沼貴之, 飯野拓也, 壇原聡, 水野幸子 |
| 2003卒論 | 「実験室スケールでの万有引力の法則の検証」高橋麻里子, 常野達朗, 宮野陽介 |




































