研究紹介

研究テーマ(亀田 真吾)
亀田 真吾  太陽系内天体に関する研究を行なっています。特に水星大気、月惑星表面の組成・形成年代、小惑星表面の物質分布といった対象を中心に研究を進めており、 日欧共同水星探査計画BepiColombo、小惑星サンプルリターン計画はやぶさ2に搭載する観測器の開発や月惑星着陸機に搭載する元素分析器LIBSの開発・基礎実験 を行なっています。また、初の水星周回衛星MESSENGERが2011年3月に水星に到達して観測を開始したのに合わせ、ハワイ・ハレアカラ観測所の望遠鏡を使い、 MESSENGERでは観測が難しいナトリウム大気光の大規模分布の観測を行なっています。
研究テーマ(北本 俊二)
北本 俊二  O型やB型といった早期型星が,予想外にX線で明るい天体である事が発見されたのは1982の事です。それ以降、観測が進むとともに、理論的なX線放射機構も研究されてきました。2000年代に入り早期型星のいくつかから、再び予想外 にも数百から1キロガウスという表面磁場が検出されました。今、早期型星のX線放射機構と磁場の関係を明らかにする事は,謎解き問題として大変興味ある問題です。そして、その結果は、星の進化あるいは内部構造の考え方にも影響を与えるかもしれません。我々は、たくさんの早期型星のX線エネルギースペクトルを観測調査する事で、磁場との関係を明らかにしようとしています。 X線望遠鏡の技術は進み、1999年に米国のチャンドラ衛星が打ち上げられるに至り、0.5秒角の角度分解能を達成しました。そして、可視光の望遠鏡の分解能と肩を並べる事ができました。しかしながら、同口径の望遠鏡では、可視光に比べてX線は遥かに高い理論的な角度分解能(回折限界)を持つことができます。しかし、現実的には、技術的に大変難しく、未だ誰も達し得ていません。我々は、二つの方法で、高い分解能を持つX線望遠鏡の開発に挑戦しています。一つは、能動光学を用いる方法です。これは、「すばる望遠鏡」等で用いられている技術で、鏡の形状をコンピューターで制御することで、高い分解能を達成しようとする技術です。もう一つは、X線干渉計です。天体からのある波長のX線を2箇所の鏡で受け止め合成し干渉させた場合、干渉の度合いは、2箇所の鏡の間隔と天体の見かけの大きさにより決められます。従ってX線干渉計は普通の意味での撮像はできませんが、天体の大きさや大雑把な形状を測定する事ができます。 X線干渉計を天体観測に応用しようとしているのは、今では世界中で我々だけです。そして、夢は世界に先駆けてX線干渉計を実現しブラックホールの大きさを測定する事です。 図のキャプション: X線ビームスプリッターの特性測定の実験。真空槽を高エネルギー加速器研究機構へ持ち込んで実験をしている。
研究テーマ(田口 真)
田口 真  地球の大気中では様々な発光現象が起こっています。地球以外の惑星の大気にはまだ私たちが知らない現象も多くあることでしょう。光は障害物がない限り光速で進み続け、遠く離れた場所に発光源の情報を届けてくれます。私たちの研究室では光を使った惑星大気の研究を進めています。2010年に打ち上げられた金星探査機「あかつき」には私たちの研究室で開発された赤外カメラが搭載されています。残念ながら「あかつき」は金星周回軌道に入ることができませんでしたが、「あかつき」が金星から離れる際に撮られた貴重な赤外画像を使って、金星夜面の雲頂高度領域の温度分布を初めて導出しました。
 惑星の大気にもオーロラや、大気中の化学反応によって発生する微弱な光(大気光)や、雷放電による光など地球大気と同じような発光現象があります。しかし、惑星は遠く離れているので、詳しい空間分布を知るためには大口径の望遠鏡を使うか、探査機を飛ばして惑星に近づかなければなりません。また、微弱な光をとらえるためには、明るい光学系と民生用デジカメに使われているものより格段に高感度のCCDや光電子増倍管といった光検出器が必要になります。それらの光学技術を結集して、私たちは気球を使い地球の極域成層圏に望遠鏡を浮かべて惑星大気の観測をする、言わば空に浮かぶ天文台の開発を進めています。
 北極や南極で見られるオーロラは言葉で言い表せないほど美しく神秘的な発光現象ですが、オーロラを使うと地球の超高層大気や磁気圏の様子を知ることができます。例えば、オーロラの光のドップラーシフトを測ることで、超高層大気の温度や風速を知ることができます。また、北極と南極に同時に現れるオーロラの明るさを比べることで、磁気圏の南北非対称性がどのくらいあるか見積もることができます。これまで理論的に予想されていた南北半球のオーロラ発光強度の違いを観測的に実証しました。
 私たちの研究室では、現在開発中の小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載される赤外カメラや次期火星探査機に搭載を目指した赤外分光器や紫外イメージャーなど、将来の惑星探査に向けた観測機器開発や観測シミュレーションも行っています。
研究テーマ(内山 泰伸)
内山 泰伸  宇宙は興味深い高エネルギー現象に満ちています。たとえば、人工の加速器では到達できないような超高エネルギーに加速された粒子が「宇宙線」として地球に到達していますが、その起源はまだ決着のつかない問題です。また銀河の中心に鎮座する巨大ブラックホールは、光速のジェットを射出しますが、そのメカニズムはよくわかっていません。最近、フェルミ・バブルと呼ばれる銀河系スケールの宇宙線の泡構造が発見されましたが、そのような光速ジェットによって形成された可能性が議論されています。私たちの研究室では、このように宇宙の様々な天体において観測される高エネルギー粒子の加速・生成について研究を進めています。  最近はフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡とX線観測衛星を用いた超新星残骸の研究に重点を置いています。超新星残骸の衝撃波は、銀河宇宙線の起源として注目されている天体です。衝撃波統計加速(フェルミ一次加速)というメカニズムによって、ベキ関数型のエネルギースペクトルを持つ高エネルギー粒子が加速されると考えられています。フェルミ加速は宇宙で普遍的な重要性をもち、その機序を理解する上で超新星残骸は最も良い実験場と言えます。最近の主要成果としては、超新星残骸からのパイ中間子崩壊ガンマ線の証拠を得たことがあげられ、この研究成果は米国サイエンス誌に掲載されました。
研究テーマ(星野 晶夫)
星野 晶夫  今日の宇宙に見られる大規模構造は、主にシミュレーション計算により、宇宙誕生初期に存在したわずかな密度ゆらぎが元になって、ダークマターやガスが重力収縮、衝突、合体を繰り返しながら、137億年という途方もなく長い時間をかけて形成されてきたと考えられています。一方、中高温銀河間物質と呼ばれる10万〜100万度の温度をもつ物質の6〜8割近い大部分が、宇宙の大規模構造に沿って分布していると予想されていますが、未だ存在が確認されていません。このような、宇宙の大規模構造形成史を観測的に解明することは、現代の観測天文学に課せられた最も基本的な課題の一つになっています。  宇宙最大の自己重力系である銀河団の中心部は、大規模構造のなかでも最も物質密度が高く1000万度近い高温ガスで満たされて強くX 線を放射し、これまで詳しく観測されてきましたが、質量としては銀河団全体の半分にもなりません。宇宙の大規模構造という観点ではむしろ、質量の大半を占め、さらには大規模構造と接続する銀河団外縁部は、ガスが落ち込みながら成長を続けている構造進化の最前線であり、銀河団ガスの加熱過程をさぐる上でもっとも重要な場所です。そこで私は、銀河団外縁部の物質の分布と物理状態、特にフィラメント構造からガスが銀河団に落ち込んで加熱される様子を観測的に明らかにするということを目的として日本のX線天文衛星「すざく」を用いた観測的研究をすすめてきました。  現在は、日本で打ち上げを予定している「ASTRO-H」衛星による宇宙観測実現のため開発に参加しながら、本学では次世代のX線検出器を用いた地上での分光システムを構築して分光観測の新領域を開拓することを目指しています。

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立教大学理学部物理学科:研究案内