見守る笑顔



  コートの中と外、どちら側からも頼もしくチームを支えてきた4年生が引退し、新チームを任されたのは2人の3年生。ここでは勝手ながら、その1人であるマネージャーの小林(社3)について書こうと思う。もう1人の3年生、新主将・田中(観3)の熱い意気込みはこちらで是非チェックしてほしい。

  実は、小林は以前「あの子にエール」という連載企画に登場してくれている(記事はこちら)。そのときのインタビューと記事も私が担当したのだが、当時彼女は唯一のマネージャーだった。それが今年度マネージャーとして岡野(文1)が入り、2人体制となった。(ここだけの話、その後輩に接する彼女を見ていた私は、勝手に「先輩になったんだな…」などと感慨にふけっていた。)あれから約1年、プレーヤーとは違う立場からチームを支えてきた彼女が遂に最上級生になる。今年度を通じて彼女が考えてきたことから、最後の1年に懸ける思いに迫っていきたい。ベンチから声を張り上げ、決してコートに立つことはない彼女のリーグ戦とは――。

ベンチでの決めごと

ベンチから応援する小林(左)
  小林のトレードマークは、何と言ってもこちらも思わず微笑んでしまうような優しい笑顔だと思う。これまでのリーグ戦でもベンチでコートの選手たちと共に喜びを共有してきた彼女だが、今季、ある選手からかけられた言葉がきっかけになり、さらに笑っていることを心がけるようになったという。それは、連敗でチームの雰囲気があまり良くなかったときのこと。コート上は暗い雰囲気だが、ベンチを見ると小林と岡野が笑顔でいてくれる、それが嬉しいという言葉だった。チームが厳しい戦いを強いられていた中で、技術面の指摘が出来ないため、それ以外の面で懸命にサポートをしてきた彼女。そんな彼女が、またひとつチームの中での役割を見つけた瞬間だった。どんなに負けていても、流れが悪くても、暗い顔をしないで笑顔で応援すること。それが彼女が選手達と共にリーグ戦を戦うために欠かせない「決めごと」になった。

思いやりの気持ち

  今季の大きな変化は冒頭でも述べたように、マネージャーが2人になったことで仕事を分担出来るようになったことだ。仕事も精神的にも余裕ができるようになったと話してくれた小林。それでもこちらから見ていると、いつも忙しなく動き回っているように感じられる。そんな中でも、彼女はいつもにこにこと笑っていて、必ず挨拶をしてくれるという印象だ。バレー部のOB・OGの方々には勿論、私たち担当記者に対しても丁寧に対応してくれるところは思わず尊敬してしまう。4年生の方が伝えてくれたという思いやる気持ちや感謝の気持ち、それらが身に付いているのだろう。新チームになる際に、みんなで大切にしなければと確認し合ったという思いやり。チームに浸透させていくためにも、自分は率先してやっていかなければならない。しかし、そこに気負い過ぎているというような空気はない。これまでに培ってきたものがそうさせるのか、ともかく彼女は泰然として構えているように見えるのだ。

2人きりの同期

いつも明るい笑顔を見せる田中(前)
  それはたった1人しかいない同期である、田中の存在も大きいだろう。2人だけで不安はないのかを尋ねると、特に感じていないという。そのひとつの理由として、副主将の上阪(コ2)をはじめ、2年生を筆頭に後輩たちが支えてくれることをあげてくれた。そんな頼もしい2年生については、前の記事で書いてくれていることだと思うので、ここでは割愛させていただく。もうひとつの理由であろう、田中との信頼関係について触れたい。逆に2人だからこそ、話を共有出来てやりやすいとお互いが話してくれたように、がっちりと連携をとって部をまとめている彼女たち。小林は、田中を「強い」と評する。高校時代にも主将として部を引っ張ってきた田中、違うのはコートに立っていないことだ。しかし、これまで試合に出られないことに対して田中がマイナスな雰囲気を出していることなど感じたことはないと小林はいう。むしろ、「自分が出れなくても、出来ることは何だろう」と頑張る姿がそこにはあり、それは見る人に強さを感じさせるものだった。お互いに尊敬し合っているからこそ、彼女たちは2人でも大丈夫と言い切れてしまう。何とも頼もしい関係で、羨ましく思えるほどだ。


「自信をくれる場所」

時には全身で喜びを表現する
  1年前、女子バレーボール部を「面白い場所」と答えてくれた小林に同じ質問をしてみた。すると、熟考の末に彼女はこう言った。「自信をくれる場所」。今までやってきてつらいこともあった。しかし、自分が頑張ったことに対して、選手は勝てなくてもプレーで頑張りを見せてくれる、直接「ありがとう」と伝えてくれる人もいる。それらはすべて彼女の自信につながり、さらにその笑顔を輝かせているようだ。



  最後の1年間、やり遂げたいこともある。「絶対に最後までやりきる」と力強く語ってくれた彼女は、やり遂げた先に何を掴むのか。そのときを楽しみにしつつ、まずは2人が作り上げていく新チームの活躍を期待しよう。あんなににこにこした2人が上に立つのだ、思わず応援したくなるチームになるに違いない。

(和田めぐみ)





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