「ローラーホッケーは大学生活の全て」  吉野江利加(営4))

  吉野は4人いる4年生女子の中で、唯一レギュラーの座を得られなかった。「私は力不足で貢献できていなかった」。成長著しい後輩の姿を見て、チーム内での自分の存在意義に悩む時期もあった。立大は監督のいない中、メンバーの選出や交代の采配はリンク内の原や根本が行っている。同期に対しても贔屓(ひいき)せずに、実力主義のチーム運営をしてきた。「私もこのままじゃいけないと思えた。2人の存在は自分の原動力だった」。

  リンクに入って戦えない日々も、ベンチ外から声を出して強い立教に貢献しようと立ち直った。「外から見ないと分からないこともあると思うんです。ベンチから意見を出したら、チームメートもちゃんと聞いてくれて『アドバイスのおかげで点が入った』と言ってもらえたり。私はこういうところで立ち位置を示していけるんだと」。

  インカレ決勝。キャプテンの原は、2点の差がついたら吉野を試合に出そうと決めていたという。「シュートの瞬間は『エリカ!エリカ!エリカ!』って思って打ちました(笑)」。原がネットを揺らすと、吉野が交代出場。4年生がリンクにそろって戦う瞬間が訪れた。「最後に出られたのもみんなのおかげ、本当に感謝しかない」。吉野はその後、記念出場で終わらず、なんとダメを押す3点目を挙げてみせた。ドラマのような展開に、立大ベンチはその日一番の盛り上がりで彼女のラストゲームを讃えた。


「本当にいいチームだった」  原優紀(観4)

  黄金世代。多くの人がそう例える女子チームを、あらゆる面で引っ張ってきた絶対的な存在がキャプテンの原だ。相手のチャンスの芽を何度も摘み取り、勝負どころで決定的な仕事をする彼女に、チームメートは全幅の信頼を寄せた。昨年はGKの池上(13年度卒)が唯一の4年生。フィールダーの中ではすでに最上級生だったため、実質のチームリーダーとして2年間を過ごしきたが、「自分一人でやっているというよりは他の4年生がずっと支えてくれていたのでそんなにキャプテンの重圧を背負ってきた感覚はない」。

  3年次には、立大女子は「学生には敵なし」のチームになっていた。「次は何を目標にしたらいいんだろうと自分の中ですごく考えていて、モチベーションをどう上げたらいいのかと」。原が打ち出した目標は「打倒社会人」だった。当時は遠い存在だった社会人クラブに対して牙をむこうとチームに訴えた。チームメートもその目標に賛同し、学生一で満足せずに日本一に照準を合わせた。

  このチームのすごさは、目標の高さだけでなく、それを現実にしてしまうことだ。13年度、14年度と全日本選手権を連覇。正真正銘の日本一の座を獲得した。さらに今年度は主要4大会制覇の「四冠」を目標に設定し、見事達成。「この女子チームは歴代の学生の中で最強だったかもしれない」と男子チームの小川も舌を巻く。「最後の試合はみんなを出した上で勝てて、本当にいいチームだと思ったし、そういうチームになれて良かった」。

  圧倒的な強さを誇っただけに、王者としての重圧は否応にも後輩たちに引き継がれていくことになる。「後輩のみんながいなかったらこの結果は出せていないということを分かってほしい。自信を持ってプレッシャーに打ち勝って、強い立教を保ってほしい。迷うときもあると思うけど、そのときは勝負にこだわって勝つことを軸に。やっぱり勝つことが一番重要だと思うので」。やはり勝負の世界。今回のインカレでも、もし優勝できなかったとしても今までの努力や成果といった事実が消えてなくなるわけではない。それでも負けてしまったら、過去の栄光はくすみ、見えにくくなってしまうだろう。最後に笑って終わるために、そしてこれまでの栄光をさらに輝かせるために、「勝ちにこだわる」精神が引き継がれていくことを願う。


<次ページへ続く>
【次ページ】「優勝しなきゃ立教として終われない」小川杜人
      2      



Copyright (C) 立教スポーツ編集部, All Rights Reserved.