

二年前、ひょんなことから付き合うことになった聴覚障害者のエリカと、健聴者のタクヤ。しかし、付き合っていくうちに、大きな壁が二人の間にあることに気づき始める。
ろうの世界と健聴の社会・・・。エリカ自身は「人より聞こえ方が悪いだけ」と自分を「ろう」ではなく「難聴」と位置付けている。だが、健聴の社会からは「聞こえない人」と言われ、聾社会からは「健聴者と一緒にいる健聴側の人間」と区別される。そこから生まれる疎外感。エリカ自身、自分がどちら側の人間なのかがわからなくなっていた。
それに対し、エリカの親友コトミは「ろう」として自信を持って生きている。コトミは「聴者にはろう者の気持ちがわからない」と、エリカがタクヤと付き合うことに反対していた。それでもエリカはタクヤの愛を信じ続け、二人はお互いの世界を分かり合おうとしていく。エリカはタクヤと一緒にいるだけで幸せだった。
そして、付き合って一年。二人の心には、隙間風が吹き始めていた。聞こえないことに原因があると感じたエリカは、健聴に近づこうと懸命な努力を始める。
しかし、タクヤは「ろう」として堂々としているコトミにひかれていたのだった。次第に、健聴者に対して頑なだったコトミの心も動かされていく。コトミにひかれているにもかかわらず、エリカへの思いも断ち切れないでいるタクヤ。エリカは離れがたい気持ちをおさえ、自分からタクヤに別れを告げ、一人で前に進もうと旅立って行った。
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